株式会社リベルタス・コンサルティング

特色ある教育事例の紹介(1)

弊社では、これまでも『大学教育の質的転換に向けた実践ガイドブック』や「『社会人基礎力を育成する授業30選』実践事例集」などにおいて、大学等における教育取組の事例を調査・紹介してきました。 今後、弊社WEBサイトにおいても、先進的な教育事例についての自主調査の結果をご紹介していきます。

第1回目として、技術の発展により急速に普及が進んでいる遠隔教育について、特にリアルタイム性と双方向性を重視した新たな取組として、グロービス経営大学院の『オンラインMBA』をご紹介致します。

参加者全員が考えアウトプットする高密度な授業を展開
(グロービス経営大学院『オンラインMBA』)

■様々な人に学びの機会を提供する『オンラインMBA』

ビジネススクールのグロービス経営大学院は、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡と5つのキャンパスをもっているが、以前からこの5キャンパスに通学が困難な地方や海外在住者の方からも通いたいという声があった。さらに、5キャンパスの近隣に住んでいても、育児や介護で時間的制約がある、出張が多いなどの理由から通えない人もいた。このような人たちに対しても学びの機会を提供できないかと、オンライン授業を模索していた。

受講者側の通信環境も格段に整ったこともあり、2014年からトライアル講座を開講し、『オンラインMBA』を、2014年10月期から単科講座(2科目)、2015年4月期から本科で開始することとした。

2014年10月期には、国内14都道府県、海外5カ国から36名が受講したという。特に、通学型の授業に比べて、女性比率が高かったことも、オンラインMBAの特徴となっている。

■オンラインでも、リアルタイム、かつ双方向の授業を重視

ビジネススクールのグロービス経営大学院では、ビジネスリーダーの育成に向け、これまでも、教員と学生、学生同士のインタラクション(双方向型)を重視した実践的な教育に力を入れていた。一方的な説明を行う授業ではなく、学生に意思決定させ、発表し合い、学生が双方向に話し合う授業を展開し、経営者として活躍するために重要な瞬時に意思決定できる判断能力とコミュニケーション能力を育成してきた。

そこでオンラインMBAでは、通学型の授業と同じように、リアルタイムで、かつ少人数によるディスカッション等の双方向性を重視した「少人数限定形式オンライン講座(SPOCs:Small Private Online Courses)」を採用している。授業は、夜9時スタートする。受講生はPCの向こう側に準備してもらい、事前に予習を行った上で授業にのぞむ。各自発表を行って議論を行う。

オンライン学習のスタイル

なお、画面の近くにいることもあり、学生との距離感は非常に近いという。学生も“教師が自分に話しかけている”と感じるようだ。

■“個人のアウトプットの質”“言語化能力”が問われるオンライン授業

副研究科長 オンラインMBAプログラム責任者の荒木氏は、オンライン授業について、最初は学習効果上の懸念もあったと語る。だが、実際に授業をやってみると、通学型授業とはポジティブな意味での違いがあったという。

オンライン授業のイメージ

最も大きな違いは、より“個人”としてのアウトプットが問われる面にあるという。これまでの通学型授業は、グループディスカッション主体で行われている。35名の学生が、5-6名でチームを組んで互いに発表し合い、グループで仕上げたアウトプットをたたき台に議論していく。一方、オンラインMBAでは、機能的な制約もあり、グループワークよりも個人での発表が主体となっている。個人が事前にやってきた課題をそのまま発表し、その発表に対してチャット等を使いながら議論を深めていく。すなわち、通学授業以上に、個人の力量が問われることとなる。

さらに、オンライン授業では“言葉が唯一の表現方法”となる。ボディランゲージや非言語コミュニケーションが減り、言葉でいかに表現するかが重要となる。自分の考えについて、どんな言葉を選択し、端的に伝えていくかという“言語化能力”が磨かれることになる。オンラインの授業では、学生が慣れてくるにつれ、だんだんと、分かりやすい言葉で、スピードある議論が展開されてくる。

なお、通学型授業は180分なのに対して、オンラインMBAの授業は、オンラインという特性も考慮して1コマ90分の高密度で行われている。

■オンライン授業の指導ポイント

(1)オンラインだからこそ、授業に前のめりで参加させる

オンラインでの授業のポイントは、(通学型でもそうなのだが)生徒を単なる「聞くモード」にしないことにあるという。「TVのようにソファに寝そべって話を聞くような態度ではなく、前のめりで授業に参加させないとダメです。そのために「チャット機能」「挙手機能」「発言機能」を駆使し、授業に参加させています。」と荒木氏は語る。 例えば、集中力が切れかかってきた学生に対しては、「指名して発言させる」など、意識を集中させる工夫を行っている。なお、オンラインの授業には、通学型での授業ノウハウが生きているという。知識を伝えるだけではなく「考えさせる」「場を作る」といったグロービスの授業の仕方がオンライン授業でも活用されている。

(2)チャット機能は、“全員が一斉にアウトプットできる”装置

上記の機能の中でも、オンライン授業では、特にチャットが大事な機能となるという。「チャットを用いれば、全員が同時にアウトプットできます。すなわち、全員が一斉に脳を使う機会を設けることができます。通常の授業では30人が一斉に発言することはできませんが、チャットなら一斉の発言も可能になります。

例えば、事前に作成してきた学生のPPTに対して、皆で一斉に『フィードバックコメント』『発表の良い点』『改善点』などを出させる。教員は、全員のコメントを読んで、これはと思うものをピックアップする。

なお、教員の方も、『ウォーミングアップでの簡単な質問』『深く考えさせる質問』など色々な使い方を組み合わせて、緩急をつけた授業展開を心がけているという。

(3)授業外でのネットワーク作りも

「オンラインMBA」では、社会人学習の特徴でもあるネットワークづくりについても意識し、授業外のイベントも行っているという。 12月には、オンライン上でのエア忘年会が行われ、非常に盛り上がったという。オンラインでの飲み会は、各自が家から参加するため、家族を紹介できるなどのメリットもある。

2015年4月13日
【本件に関するお問合せ先】
株式会社リベルタス・コンサルティング
上條 太郎(かみじょうたろう)
HR・市場戦略部 八田 (はったまこと)
E-mail: hatta@libertas.co.jp
Tel: 03-3511-2161
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