石油価格の上昇が止まらない。
筆者は決して石油業界の事情に明るいわけではないが、「ガソリンが1リットル150円を超えた」、「原料価格の高騰からティッシュペーパーからパスタ等の食料品まで値上げが相次いでいる」といったニュースが新聞を賑わす中、石油価格の推移がどうなっているのかを統計データからみてみた。
原油価格の国際的な指標となっている米国ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の取引価格は1バレルあたり100ドルを目前とした展開になっている。 WTIの価格は長期契約を前提としないスポットの価格であり、価格の値動きが激しい性格の指標ではあるが月あたり平均価格の推移をみても全体として明らかな上昇基調にあるといえよう。
こうした国際市況の動きが直接私達の生活に影響を与えてくるわけではない。 日本の石油会社が実際に取引する際の価格は、スポットの価格指標であるWTIと比べれば安定的に推移するのは自明のことであるし、原料価格が上昇したとしても直ちに小売価格に反映させるわけではない。 とはいうものの、指標価格の上昇が続けば石油会社の原料費は確実に上昇することになるし、それが続けば小売価格に転嫁せざるを得ないのは言うまでもない。
今回の原油価格の上昇は1990年の湾岸危機の際のような一時的なものではない。 確かに、ここ数ヶ月の急激な上昇についてはサブプライムローン問題やドル安を背景とした投機的資金の影響が大きいため、この部分については不確定要素が強い。 しかしながら、大きな背景として中国やインドなど新興国の経済発展による世界的な需要の高まりがあり、石油産出国側の思惑やイラン、イラク等の地政学的なリスクなどはあるものの、価格が下がる基調的な要因は少ないことから、趨勢としての上昇傾向あるいは高止まりが今後も続くものとみられている。
一方、国内の小売価格について、消費者物価指数の近年の動きをみてみたのが図表3である。 一見して、他の物価に比べて石油製品の上昇、農水畜産物の下落が顕著で、他の財・サービスはそれに比べると安定した推移を示しているといえる。
しかし、統計にはまだあらわれてきていないものの、新聞報道によればガソリン価格だけでなく、タクシー料金からティッシュペーパー、カレールーやパスタ、かまぼこなど食品など様々な分野で値上げが相次いでいるとのことである。 食品などはメーカーの希望小売価格が変わったとしても、実際にはスーパー等の現場では値引きや特売価格での販売が多いため、すぐには消費者には実感されないのかもしれない。
石油価格の上昇は運送費などコストを引き上げ、様々な分野に影響が及ぶ。 また、バイオエタノール燃料の原料になるとして、国際的にとうもろこし等への転作が進んだ結果、大豆や小麦の相場が高まっていると言われる。 日本は食料自給率が低く、輸入依存度が高いため、今後もこうした傾向が続けば小売価格への波及は避けられないとみられる。 今後も関連したニュースやデータについては、継続して見ていきたい。