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大切なのは「失要率」を下げること

去る5月29日に総務省から公表された平成19年4月の完全失業率(季節調整値)は3.8%で、平成10年3月以来、約9年ぶりに3%台まで低下しました。景気が回復基調で推移していることによる労働力需要の高まりがこの背景にあります。

ところで、失業率の低下は高齢者のニコリ・グットを高めてくれるでしょうか? このコラムではこの点について考えます。

後期高齢者のニコリ・グットの判定には適さない「失業率」

現在、少子時代における貴重な人材である高齢者の就業を促すため、様々な施策が講じられています。その成果もあって、65歳以上の失業率は他の年齢階層に比べて低位で推移しています(図1)。

図1:年齢階層別の完全失業率の推移
図1:年齢階層別の完全失業率の推移
データ:総務省「労働力調査」各年値

ここで失業率の定義を確認しましょう。完全失業率とは、「15歳以上の就業の意思を持つ人々(=労働力人口)に占める完全失業者の割合」です。ここで重要なのは、「就業の意思を持つ」という点です。つまり、就業はせずにビジネスと違う形(例えばボランティアなど)での社会貢献を望む高齢者が、実際に活動の場を得ることができているかどうかについては、失業率からは窺い知ることができません。

図1に示したように65歳以上の失業率が低いのは、政府の雇用促進策が奏功しているという面もありますが、そもそも高齢者には会社勤務を希望する人の数(失業率の計算式の分母に相当)が少ないからです。つまり、高齢者の場合は退職などで失業した段階で労働市場からそのまま退出する(再就職を望まない)ケースが比較的多いので、失業者の発生がダイレクトには失業率上昇に結びつかないのです。とりわけ75歳以上の後期高齢者の場合、この傾向は顕著です。

しかも、総務省が公表している年齢階層別の失業率では上限カテゴリが「65歳以上」となっており、「75歳以上」という後期高齢者に該当する独立の区分はありません。総務省には失礼ですが、これでは後期高齢者を軽視していると言われても仕方がないように思われます。

このように、失業率は国家全体のウェルフェア(厚生)水準を知る上でとても大切な経済社会指標ですが、高齢者とりわけ後期高齢者の活躍の場の確保(ニコリ・グット)という観点からすると、あまり役に立つものではありません。

後期高齢者の「失要率」を引き下げよう

では、失業率以外に、高齢者の活躍の場の確保状況を知るための有力な、かつ一般に広く浸透している経済社会指標はあるでしょうか? 答えは残念ながら否です。

弊社は、こと後期高齢者については、「社会で必要とされたい」と望んでいる人が本当にその機会を得ているかどうかを示す「失要率」にこそ着目すべきだと考えます。就職は無理だけれども社会のために何かやりたいと思っている多くの後期高齢者に配慮し、これまでの“業”(仕事)から“要”(社会参加)へと発想を切り替えるべきです。

例えば、内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」は高齢者にNPO活動への関心の有無を尋ねています(図2)。図から分かるように、75〜79歳では「NPO活動に参加している」と「今後参加したい」への回答率がそれぞれ3.9%、4.7%です。両者を合わせた8.6%をNPO活動に参加する意思を持っている層とみなしたとき、意思はあるが参加していない人の割合(4.7÷8.6×100=54.7%)がここでの失要率となります。80歳以上について同様の計算をすると失要率は80.0%となります。

ここでの計算例は前述の失業率の算式に則っていますが、こうした単純な計算によっても、各分野における失要率のおおよその推計は可能です。こうした「失要率」の算定と、その引き下げ努力を多様な分野で地道に行っていくことが、高齢者のニコリ・グットの向上につながるはずです。

図2:後期高齢者のNPO活動への関心の有無
図2:後期高齢者のNPO活動への関心の有無
データ:内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成16年)
以 上
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