株式会社リベルタス・コンサルティング

ニコリグットって何だろう?

弊社(株式会社リベルタス・コンサルティング)のホームページをご覧になって、初めて「ニコリグット」という言葉を知った人は多いことでしょう。この耳慣れない言葉に込められた意味は何でしょうか? それを知っていただくため、このコラムでは2つのトピックをご紹介します。

ヒヤリハット

ニコリグットのことは知らないが、ヒヤリハットなら知っているという人はいるはずです。ヒヤリハットとは、一歩間違えば事故につながりかねない「ヒヤリとしたりハッとする」場面のことです。

(財)日本医療機能評価機構の調査によれば、医療現場で2005年の1年間に発生したヒヤリハット事例は実に18万件強に上ったそうです。安全であるはずの医療機関でこれほど多くのヒヤリハットが生じているという事実は衝撃的であり、その一刻も早い撲滅を願うばかりです。しかし、それと同時に次の疑問が頭をもたげてきます。――ヒヤリハットが無くなればそれで十分だろうか・・・?

ヒヤリハットという暗くネガティブな面が生活から消えるのはもちろん望ましいことですが、そこから人の活力・バイタリティは湧いてこないでしょう。なぜなら、それは明るく豊かな生活への必要条件ではあっても、十分条件ではないからです。ですから、事故が無い安全な社会を目指すことに加えて、私達が日々の生きがい、張り合い、楽しみを見出せるよう、生活の随所に明るくポジティブな面を創り出していくことが大切だと考えられます。

ヒヤリハットを超えて、人が「ニコリと笑ったりグッと感動する」場面を生み出していこう。弊社が提唱しているニコリグットという言葉には、そんな思いが込められているのです。

「満足」ではないけれど「幸福」

弊社は2006年11月、NTTナビスペース株式会社と共同で、現代人が抱いている「生活満足度」と「幸福度」の把握を目的とした独自調査を実施し、10代〜50代の6,279人から回答を得ました(調査結果の詳細は弊社ホームページ上のレポート「現代人の『生活満足度』と『幸福度』」でご覧いただけます)。

この調査では、回答者に対して次のように質問しました。

【生活満足度について】あなたは現在の生活にどの程度満足していますか。
→「満足している」「まあ満足している」「どちらともいえない」「やや不満だ」「不満だ」「わからない」から1つだけ選択。
【幸福度について】あなたは現在どの程度幸福だと感じていますか。
→「非常に幸福である」「まあ幸福である」「どちらともいえない」「あまり幸福ではない」「まったく幸福ではない」「わからない」から1つだけ選択。

集計の結果、生活満足度では「満足している」と「まあ満足している」への合計回答率が46.2%であったのに対し、幸福度では「非常に幸福である」と「まあ幸福である」の合計が半数を超える55.6%に達しました(下図)。

調査結果:生活満足度と幸福度
(出所)NTTナビスペース(株)と(株)リベルタス・コンサルティングによる共同自主調査の結果から作成。

もし回答者が生活満足度と幸福度をまったく同じ意味に解釈していれば、こうした10ポイント近くもの差異は生じないはずです。

社会心理学の既存研究などによれば、「満足」とは生活の豊かさや質に関する生活者による客観的な査定の結果です。他方の「幸福」は、「満足」をベースとしつつも、その時々の自分の社会的境遇や人間関係、健康状態などに対する感情・感慨といった心情的・情緒的な要素の影響を受けるとされています。だとすれば、上述のアンケート結果の差異が示唆するのは、「いまの生活を冷静に査定したとき、たとえ満足できる水準に達していなくとも、心情的にはそれはそれとして肯定的に(自分はそれでも幸福だと考えて)受け容れる人が一定程度存在する」という事実です。

そこで次に、生活満足度について「不満だ」、「やや不満だ」あるいは「どちらともいえない」と回答したにもかかわらず、幸福度では「非常に幸福である」あるいは「まあ幸福である」と回答した人の数を集計しました。これに該当するのは「生活に満足ではないけれど幸福だ」と感じている人です。その結果、該当者数は749人で全体の11.9%でした。性別、年齢別でみても、各階層でコンスタントに1割程度を占めることも判りました。

満足ではないけれど幸福――この一見矛盾する事実こそ、ニコリグットの重要性を示唆しています。例えば、重篤な病状にある人の生活満足度を「健康状態の良否」という客観的な基準から判定すれば、結果は明らかに「不満」となるでしょう。しかし、その人がひとりの人間として尊敬され、家族の愛や仲間の友情に支えられながら治療生活を送っているとしたらどうでしょう。生への意欲が湧き、場合によっては「自分は幸せだ」と思えるのではないでしょうか。何もこれは大袈裟なことではありません。日々、ニコリと笑ったりグッと感動できる小さな場面を積み重ねていくことで、私達の生活はもっと明るく豊かなものになるはずです。

先のアンケートで、生活に満足ではないが幸福だと回答した11.9%の人々を仮に「ニコリグットな層」と呼ぶとすれば、この層の心のあり様と生活スタイルを知り、それを広く実践していきたいものです。

結び

このコラムでは、2つのトピックを通じてニコリグットという言葉に込められた意味を論じました。イメージをつかんでいただけたでしょうか?

最後に少し補足します。弊社は、ニコリグットというのは高齢者とりわけ75歳以上のいわゆる「後期高齢者」のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を考える上で重要なキーワードだと考えます。社会的にも生物学的にも弱者とされる後期高齢者がニコリグットを享受できる世の中こそ、夢を持てる社会だからです。若年層にとって現在の高齢者の姿は将来の自分の姿でもあります。高齢者のニコリグットを実現している社会は、若年者にも夢のある社会だといえましょう。

また、国や地方自治体の行政に任せるだけではニコリグットを十分には実現できないという点も、強調しておきたいことの1つです。ヒヤリハットに代表されるマイナス要素を除去する際には行政の出番かもしれませんが、ニコリグットのようなプラス要素の創出には家庭、地域、企業などでの創意工夫と実践が不可欠です。

以上に述べた考え方が多くの人達の共感を呼び、ニコリグットな社会の実現に向けた大きなうねりのきっかけとなれば幸いです。

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